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綺麗な花には毒がある
それは、友人からのメールを装っていた。

そろそろ蒸し暑さを増してきた6月のある日。B郎のメールボックスになにげなく舞い込んで来たそのメールは、以前勤めていた会社の同僚C男からのものだった。題名は「japanese lass' sexy pictures」となっていて、なにか添付ファイルがついている。
プレビュー画面を見ると(B郎はメーラーの設定を「プレビューする」にしていた)、本文は英語。
添付されていた画像はgifファイルで、別にセクシーな写真でもなんでもなく、なにかの製品写真だった。
…あいつ、久しぶりにメールを寄越したと思ったら、一体なんのつもりだ?
B郎は苦笑しながら、よう久しぶり、どうしたの…? と返信した。
このときB郎は見落としたが、もし注意深くメールを見たならば、もうひとつ、「on the.pif」という、見慣れない拡張子を持つファイルがあったことに気がついただろう。

ほどなくして、また同僚からメールがやって来た。
その内容は、…ご無沙汰してます、C男です。お元気ですか? ところでそんなメール、出してないですよ? というものだった。
ここへ来てようやくB郎は、あれはウイルスだったのかもしれない、と思い当たった。別にコンピュータに詳しい方ではないが、ウイルスについては知っていた。英語のメールが来たら、それがC男からのメールでなければ当然警戒していただろう。また、ダブルクリックさえしなければ大丈夫と聞いていたので、ウイルス対策ソフトも使っていなかった。
B郎は慌てて、雑誌に載っていたシマンテックのセキュリティチェックのページへ行き、自分のパソコンをスキャンしたところ、既に感染していることがわかった。
それは、その夏猛威をふるい続けた「Klez」というワームの亜種だった。

B郎は即座に駆除プログラムを実行し、結果、パソコンのデータが消失するなどの被害を被ることはなかった。
しかし、B郎は思った――C男に身に覚えがないのに、まるでC男が差し出したかのようなメールが出回っている。自分のパソコンに対策もせずにおいたせいで、ひょっとしたら誰かの迷惑になっているのではないか? …そう思うと、B郎は血の気が引く思いがするのだった。

この事例は、典型的なウイルス感染事例を脚色、再構成したものです。
情報処理振興事業協会(IPA)によると、2002年の届出件数は、前年の約0.8倍(上半期に限れば約1.2倍)。うち感染実害の割合は2000年、2001年の20%が2002年上半期には8.5%と減っており、200年下半期からウイルス対策ソフトの導入が進んで感染前に発見対処されるようになったから、と分析しています。しかしKlezのように蔓延が長引くものや、亜種が出回ってぶりかえすケースが後を絶たないことも事実。IPAでは、引き続きウイルス対策を行うことが重要、と呼びかけています。


解説
進化するウイルス



このケースでは、結果的に「C男」くんはウイルスもしくはワームには感染していませんでした。なによりの証拠には、C男くんが使っているのはMacintosh。Windows系のウイルスには感染しようがありません。
では、なぜC男くんが差出人になってしまったのでしょう? 実はC男くんの友人であるさらに別のユーザー(D介さん?)がKlezに感染、(D介さんの)アドレス帳に登録されていたC男くんのアドレスを差出人として自分自身を送付する、ということを実行していたのです。
2002年に「Klez」が流行した背景には、プレビューだけでも(ダブルクリックしなくても)感染できたほか、このように差出人を詐称して、受け取った人がつい開いてしまう心理をうまく利用したものであったことが挙げられます。もちろん、感染源もなかなか特定できません。

このように、ウイルスもしくはワームは、単にブラウザやメールソフトの弱みを突く技術を次々に発見して盛り込むばかりでなく、人の心理を巧妙に突く方法など、常に進化を続けています。
例えばワールドカップの時期なら「Re: Korea Japan Results」という題名をつけて開封を誘ったり、題名が日本語になっているものも出現しています。今回のケースのように、友人の名を騙ったりさえする…何を信じたらいいかわからなくなりますね。

「心当たりのないメールは開けない」「不用意に添付ファイルをダブルクリックしない」など、これまで通りユーザーとして気をつけることは必要です。しかしさらに、ノートン・アンチウィルスなどウイルス対策ソフトをインストールして、しかも日々最新のウイルス情報を更新するLiveUpdateなどのサービスを活用する。それが今、最も安心できる方法なのです。





事件の教訓

ウイルス対策に「過去の常識」は通用しない。


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