非英語圏で英語能力「低い」日本と「非常に高い」国との差とは?
2018/9/12 提供:D-SCHOOL
世界最大級の英語教育組織である「EF Education First」が実施する英語テスト。毎年非英語圏で行われますが、2017年の日本の結果は80カ国中37位、英語能力が「低い」とランク付けされました。そこで今回は、この英語テストで英語能力が「非常に高い」とランク付けされた国々と日本の差を探ってみようと思います。日本に、あるいは日本人に不足している部分を見出し、各自の英語教育にお役立てください!
1. 非英語圏の英語レベルと日本の現状
EF英語標準テストとは
EF英語標準テスト(EF SET)は、読解力とリスニング力を測るオンラインの適応型英語テスト。国際的なコミュニケーションで必要とされる貿易、科学、ビジネス、外交の分野で使用される英語能力を測定しています。
EF SETでは結果をFF英語能力指数(EF EPI)として国ごとに表しているため、国あるいは地域ごとの特徴を探ることができます。EF EPIのランク分けは、「非常に高い」「高い」「標準」「低い」「非常に低い」の5段階です。
レベルの構成
テストを実施するEF Education First によると、EF EPI能力レベルは以下の通りです。
各レベルにおける上位3か国および地域を取り上げています。
<非常に高い>オランダ・スウェーデン・デンマーク
- 社会生活の場面で正しい意味合いを持たせた適切な言語を使用できる
- 高度な文章を簡単に読むことができる
- 英語のネイティブスピーカーと契約交渉ができる
<高い>ドイツ・オーストリア・ポーランド
- 職場でプレゼンを行っている
- テレビ番組を理解できる
- 新聞を読む
<標準>ブルガリア・ギリシャ・リトアニア
- 専門分野における会議に参加している
- 歌の歌詞を理解することができる
- 熟知した内容についてプロフェッショナルなメールを書くことができる
<低い>日本・中国・ロシア
- 観光客として英語を話す国を旅することができる
- 同僚とちょっとした会話ができる
- 同僚からの簡単なメールを理解することができる
<非常に低い>シリア・カタール・モロッコ
- 簡単な自己紹介(名前、年齢、出身国)ができる
- 簡単な合図を理解できる
- 海外からの訪問者に基本的な指示をすることができる
世界的に見た日本の英語レベル
上記の5つランクの中で日本が位置するのは80カ国中37位の「低い」で、先進国の中で最も低い結果となっています。また、アジアの中では9位で、韓国、中国、ベトナムなどより下回っていました。さらに、日本は2011年から毎年順位を下げ続けています。
一方、5つの地域(ヨーロッパ・アジア・中南米・アフリカ・中東)の中でアジアはヨーロッパに次ぐ世界で2番目に英語が堪能な地域でした。アジアの1位は「高い」にランクインしたシンガポールで、マレーシア、フィリピンと続きますが、最下位にラオスがランクインするなど、他の地域よりも英語能力の格差が際立っています。
アジアの中では中間に位置する日本ですが、英語に自信がある人が受けるテストであることを考慮すると、実際にはもう少し低いレベルなのかもしれません。
2. 英語能力が「非常に高い」国vs「低い」日本
英語能力が「非常に高い」国々の特徴
次に、「非常に高い」にランクインした国々に共通する特徴をご紹介します。
- 小学校低学年からの英語教育
- 4技能をバランスよく学ぶ英語教育
- 英語コンテンツ(TV番組・映画・書籍など)が吹き替え、あるいは翻訳されず英語のまま
- 英語を含む外国語を学ぶことが特別なことではない
- ゲームなど子供が楽しむものも市場が小さいため各国の言語に翻訳されず英語のまま
- 教育支出が高い
- 自国での市場が小さいためビジネスの市場がグローバルで、英語を普通に話す大人が多い
日本人の英語力が低い理由
では、「低い」にランクインした日本は、なぜ英語力が低いのでしょうか。考えられることを以下にまとめてみました。
- これまでの英語教育が「読み・書き」重視だった
- 英語が話せない教師がほとんどで、他国に比べ英語教師のレベルが低い
- 日本語と英語がかけ離れた言語であるため、苦手意識を持つ
- 英語ができなくても問題なく暮らせる
中国やベトナムなどは日本より高い英語能力を持つという結果でしたが、これらの国には外資系企業が多く入り込み、英語の必要性が高まったと考えられます。もちろん、日本にも外資系企業はたくさんありますが、日本では外資系企業の人々が日本語を学ぶ傾向にあると言えるでしょう。
英語能力が「非常に高い」国と日本の違いとは?
最後に、英語能力が「非常に高い」国と「低い」日本との特徴から、両者の違いを探っていきます。
<環境>
- 日常生活における英語環境:幼少の頃から字幕の映画、TV番組、書籍などで英語に親しんでいるが、日本にはこのような環境がない。
- 英語が話せなくても困らない環境:日本では英語が話せなくても生活に支障はない。すべてが日本語完結できる環境。
- 学校教育の環境:詰め込み式、「読み・書き」重視、受験のための英語、先生のレベルなど、教育方針や生徒を取り巻く環境がすべて異なる。
<捉え方>
- 単一国家としての歴史が長いせいか、日本人は英語を含む外国語学習を特別と捉える傾向にあり、「英語が話せる=すごい」と感じる人が多い。一方、北欧を始めとする英語力が高い国々では、バイリンガルやトリリンガルがたくさんいる。
- 日本人は英語を「科目」あるいは「勉強」と捉えるが、英語力が高い国の人々はコミュニケーションツールの1つと捉えている。
まとめ
英語能力が「非常に高い」とされる北欧の国々と「低い」とされる日本を比較することで、何を改善していけばいいのかが多少明らかになりました。政府も日本人の英語能力を向上させるために、2020年から英語を小学3年生から必修化、5年生から科目化することを決めていますが、英語環境を整えるなど個人として取り組むことも大切です。英語能力が「非常に高い」国々から学び、できることから少しずつ取り入れてみてはどうでしょう。