英語上達は学校教育だけじゃない?!スウェーデンの「英語教育」事情
2018/10/24 提供:D-SCHOOL
世界最大級の英語教育組織「EF Education First」が実施する非英語圏での英語テストで、オランダとともに上位に君臨するスウェーデン。なぜ、それほどまでに英語力が高いのでしょうか。もちろん、スウェーデン語が英語と同じゲルマン系の言語であり、文法や語彙が共通するということもあるでしょう。しかし、英語力の高さは英語教育と環境にあるようです。そこで今回は、英語力世界トップレベルのスウェーデンの英語教育についてご紹介します!
1.スウェーデンの教育システム
1.1.教育期間
スウェーデンでは初等教育に当たる7歳から15歳までの9年間が義務教育。1~3年生が低学年、4~6年生が中学年、7~9年生が高学年と3部に分かれています。
中等教育は16歳から18歳の3年間で、日本の高校に相当。高等教育への進学準備と職業教育に分かれ、初等教育の成績を基に入学が決まります。また、高等教育に当たる大学は2年から5年間で、大学はすべて国立です。
1.2.スクーリングシステム
基本的にホームスクーリングは認められておらず、学校は公立と私立に分かれています。公立学校は地方自治体により管理され、英語教育や音楽、ダンスなどの地域による特徴が選択の目安。また、私立学校の多くは、モンテッソーリ教育などのオルタナティブ教育、宗教教育、スポーツ教育など、目的別に学校が運営されています。
スウェーデンでは誰でも営利目的の学校を運営できるため、私立学校の中には私人あるいは法人が開校する「フリースクール」と呼ばれる学校があります。日本で「フリースクール」と聞くと、不登校の生徒を対象にした学校というイメージが強いかもしれませんが、スウェーデンのフリースクールはアメリカの「チャーター・スクール」に類似。親や先生の集まり、あるいは地域社会などが希望の学校を設立できますが、ニーズのない学校は閉校になるというデメリットもあります。
1.3.スウェーデンの教育の特徴
次に、スウェーデンの教育の特徴をご紹介します。
- 初等から高等教育(小学校から大学)まで、入学金・授業料が無料。初等から中等教育までは給食費も無料!
- 入試制度がない。
- 休みが多い。年間登校日数約180日、日本は約210日。
- 高卒での大学進学率が低い。中等教育後に働いたり海外を旅行したりしたあと、大学へ進学するケースが多い。
- 学校庁が目標の設定や必須科目の学習時間等の基本的な決まりを定め、詳細なカリキュラムは地方自治体と学校が決める。
- 生徒同士が競争しないように、成績表は小学6年から。
- 民主主義の価値観を理解し、自身の言動に責任を持って生きる人に育てる。
- ゆっくりとした学習テンポ。詰め込み教育ではなく、学ぶプロセスを大切にする。講義式ではなく、ペアやグループでの学習。
2. スウェーデンの英語教育
英語能力が高いスウェーデンでは、どのような英語教育が行われているのでしょうか。日本の英語教育と比較しながら紹介していきます。
2.1. 英語教育開始年齢
スウェーデンでは英語が必須科目になるのは小学3年生からですが、早い学校では小学1・2年生から、歌や数字、色など、基本的な単語を学び始めます。
一方、日本の小学校では、2008年度に小学5・6年生を対象とした外国語活動として英語教育が始まり、2011年度には5年生から必修化に。2020年度には小学3年生から必修化、小学5年生から教科化されますが、小学3年生から教科として学ぶスウェーデンとは、小学生の時点ですでに大きな差が生まれてしまいます。
2.2. 英語教育の特徴
- スウェーデンではオーラルコミュニケーションを目的とした英語教育。一方、日本はこれまで「読み・書き」重視の試験対応型の英語教育でした。2020年からは小学3・4年生の外国語活動で「聞く・話す」を導入したあと、5・6年生で「読み・書き」に進むことになるので、これまでより英語に馴染みやすくなるでしょう。
- スウェーデンでは学年が上がると英語で英語を学ぶため、4技能をバランスよく学びます。一方、日本では英語教員が英語を話せないというケースがあり、ALT(アシスタント・ランゲージ・ティーチャー)と呼ばれる外国人教員がアシストしています。英語教員の育成は、日本の英語教育の課題と言えるかもしれません。
- スウェーデンではペアやグループでの話し合いが多く、生徒同士がともに学び合います。英語を人前で話すことが恥ずかしくなくなるように、他人の間違い探しをして発言を茶化すようなことはしません。日本人は英語を話すことに慣れていないため、今後、このような学習が取り入れられることを期待したいですね。
3.耳から自然に学ぶ環境
スウェーデンではコミュニケーションを目的とした英語教育が主体ですが、英語能力の高さには以下のような環境も大きく影響しています。
3.1.英語コンテンツは字幕のみ
大人向けの番組や映画はもちろん、小さな子ども向けの番組から吹き替えなしの英語字幕で放映され、本も翻訳なしで英語のまま読まれています。つまり、自然に英語に触れる環境が小さいときから整っているということです。日本では、親御さんが整えない限り、このような環境はなかなか生まれませんね。
3.2.日常で英語を使う機会が多い
スウェーデン市場だけでは成り立たない業種などは、市場がグローバルになるので英語は必須。社内公用語が英語の企業も多く、英語を使う機会が多い環境です。また、そのような大人を子どもたちも当たり前のように目にしているので、英語学習も自然に進むのかもしれません。
まとめ
非英語圏でトップクラスの英語力を誇るスウェーデン。その高い英語力の秘密は、低学年からの英語教育と言えるでしょう。また、詰め込み式の教育ではなく、自主性を育む教育方針も要因の1つかもしれません。もちろん、言語的に似ているということもありますが、小さなときから自然に英語を耳にする環境は、我々日本人とは大きく異なる点なのではないでしょうか。これからの日本を背負っていく子どもたちには、スウェーデンの子どもたちのように、苦手意識を持つことなく自然に英語を学んで欲しいものです。