非英語圏でNo.1!高い英語力を誇るオランダの「小学校英語教育」事情
2018/11/28 提供:D-SCHOOL
世界最大級の英語教育組織「EF Education First」が非英語圏で実施する英語テストで、2年連続トップのスコアを出したオランダ。その英語力は均一性も高く、小学生の97%が基礎的な質的基準に達するほど。それほどまでに高い英語力を身につけられるのは「小学校の英語教育」にあるといいます。そこで今回は、英語力世界トップのオランダが誇る英語教育をご紹介します!
1.オランダの教育システム
1.1.教育期間
5歳から11~12歳までの7~8年間が初等教育。中等教育は中等職業教育(VMBO:4年間)、一般中等教育(HAVO:5年間)、大学準備教育(VWO:6年間)に分かれています。
将来を見据えて進学先を決めることになりますが、多くの学校にはコースが併設され、どの学校も「基礎教育課程」を導入しているので、その期間にゆっくり将来の方向性を考えることも可能です。また、HAVOやVWOへの進学は、国立評価教育研究所(CITO)が行う「全国共通試験」の成績などにより決まります。
1.2.オランダのスクーリングシステム
オランダには公立と私立の学校があり、インターナショナルスクールも公立と私立があります。
公立の学校は公的機関により運営され、多くがイエナプランやモンテッソーリなどの教育方針を採用。私立の学校は組織や団体により運営され、宗教(キリスト教やイスラム教など)を主体に教育が行われ、学費は公立同様に無料です。
インターナショナルスクールは公立・私立を問わず初等教育と中等教育があり、公立は国から助成されているため学費は私立より安め。英語力を身につけるための学校ではなく、外国人の子ども向けに国際的な教育を提供する機関となっています。
1.3.オランダの義務教育の特徴
次に、オランダの義務教育の特徴をご紹介します。
- 教育費無料、学校における教育方針の自由、学校における宗教・信条の自由などが憲法で保障されている。
- 国としてバイリンガル教育に取り組み、早期外国語教育が盛んなVVTO校がある。VVTO校とは、小学1年生から外国語教育を導入する学校のこと。英語だけでなく他言語も学習できるが、多くが英語を選択。
- 低学年でも飛び級・落第がある。
2.オランダの英語教育
EC(欧州委員会)のデータによると、15歳以上のオランダ人の94%以上がバイリンガル。もちろん、3カ国語あるいは4カ国語以上を操る人も多く存在します。オランダでは、どのような英語教育が行われているのでしょうか。
2.1.英語教育開始年齢
英語教育は義務教育開始年齢の5歳(4歳の場合もあり)から。9歳までは任意ですが、ほとんどの小学校で1年生から第1外国語として英語を導入しています。外国語は10歳から必須となり、ほとんどの小学校が英語を選択。
2.2.カリキュラムと指導方法
憲法で保障されている通り、カリキュラムは指定されておらず、学校が自由に選べます。一般に6~10歳までは教科書を使用しませんが、使用する場合はカラフルでイラストが豊富な教科書を使用。教材はダウンロードでき、全校がインタラクティブなホワイトボードを使用しています。
2.3.到達レベル
12歳までにCEFRのA1-A2レベル(※1)(※2)。
外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)によりレベル基準を設け、成果目標として使用しています。
(※1)A1:よく使われる日常的表現と基本的な言い回しを理解し、用いることができるレベル
(※2)A2:日常的な範囲なら、単純で直接的な情報交換に応じることができるレベル
つまり、初等教育を終えるまでに、日常会話ができるようになるということですね。
3.オランダ英語教育の特徴
3.1.英語教員のレベル
英語を含む小学校教員資格を有した教員が指導。教員教育コースへの入学にはCEFRのB2レベル(※3)が必要となるため、流暢で自然な英語を話す教員が指導にあたることになります。
(※3)B2:学問上や職業上の目的で、柔軟かつ効果的に言語を用いることができるレベル
英語が話せない英語教員が指導することもある日本と比較すると、教員のレベルはかなり高いといえるでしょう。
3.2.興味を引く楽しい授業
低学年では英語の歌を教員と一緒に大きな声で歌ったり踊ったりすることから始まり、教科書を使用する場合は大きな声で音読します。大きな声で音読して横隔膜を振動させるのは、若い脳を効果的に活性化させるという調査報告があり、学習意欲も吸収力も向上。教科書にあるカラフルなイラストは言語を司る左脳だけでなく、視覚や聴覚を司る右脳も刺激する効果があります。
高学年でも基本は同じですが、米国のポップスターが教科書の表紙を飾るなど、子どもの興味を上手に引き寄せています。学校によっては、ポップソングを題材に英語を学んだり、子どもが興味を持つ動画コンテンツをYouTubeで見たりすることもあるそうです。
「勉強」というより、「楽しい時間」というイメージが強い授業ですね。
3.3.英文法を習わない
授業で英文法を習わず、耳から入った英語を理解し、話すことを重視しています。到達レベルは設定されていますが、教育方法は学校が自由に決められるため、「いつまでにこの項目を教えなければならない」という決まりがありません。
オランダの英語教育は、「どのように英語の情報を読み取るのか」「知りたいことをどのように質問するのか」「知らない言葉を聞いたり読んだりしたときにどうするのか」という「学び方を学ぶ」授業なのかもしれません。
まとめ
非英語圏でトップの英語力を誇るオランダ。英語圏で制作されたネイティブスピーカーによる英語の子ども向け番組が吹き替えされることなく字幕のみでテレビ放映されるなど、幼少の頃から自然に英語に触れているのもプラスに働いているのかもしれませんね。オランダ英語教育の最大の特徴は、文法にとらわれずにコミュニーケーションのツールとして楽しく英語を学んでいること。日本人の子どもたちも、そんなふうに英語と触れ合って欲しいものです。