4月度入選作品発表
進級、新入学、新入社、新赴任……。新しい出会いの4月です。この写真俳句にも、今月初めてご応募くださった方がずいぶんいらっしゃいました。ありがとうございました。
今回は、229作品を精査させていただきました。3月度同様、リアルに伝わる日本列島各地の季節の移ろいが圧巻です。とくに、この時季は花々が咲き競うため、花の表情をズームレンズでとらえ、ユニークな俳句を配することで、コンテスト全体が華やかになりました。
ただちょっと残念な点が一つ。それは、五七五で写真を説明しようとしてしまう方が意外に多い点です。写真を見れば分かることを五七五で繰り返しておられます。気持ちは分かるのですが、見る方としては、何だかもったいないように思います。
写真には写らないけれど言葉で表現していいことは、たくさんあります。そういうことを知らせてもらった方が、こちらも作品をより楽しく味わえます。
ウィット、ユーモア、ひねり、空想…創意工夫が凝らされた作品にも、多数触れさせていただきました。これからも、どうかリラックスして、大きな気持ちで写真俳句を楽しんでみてください。
では入選作品を見てみましょう(順不同)
春うらら1+1が2人になる日
東京都) nagi 様

お日様にラインダンスをご披露し
神奈川県) 八十日目 様

シルクハットの帽子にレオタード。赤い蝶ネクタイをつけた、スタイルのいいダンサーたちが、ミラーボールの下でラインダンスを踊ります。「ヘイッ !」の掛け声とともに、頭上高くいっせいに蹴り上げられる足・足・足……。ああ、この写真俳句は、なんとそれが大根なのです ! ご披露されたお日様も、さぞ目の保養になったことでしょう。
春霞廃線跡のシルエット
大阪府) 連雀 様

いま日本各地では、限界集落と言われ、近い将来、人の住まなくなってしまう地域がいくつもあるそうです。そのような地域では、鉄道は廃線となり、物流も人の往来も途絶えます。写真は、トンネルの向こうに家族と思われるシルエットが見えます。彼方の明るさと4人の存在により、ここを列車が走り、賑わいを見せていた昔を思わせます。句の冒頭に「春霞」と置いたことで、この写真俳句のもつ幻想性、物語性が、より強化されました。
風の鯉桜の堰にジャンプして
栃木県) 孫茶 様

風になびくこいのぼりたち。気持ち良さそうです。アングルといい撮影のタイミングといい、写真だけでも見飽きない作品です。さて俳句を見てみますと、鯉が堰にジャンプして来たそうです。まあまあ、元気な鯉ですね。堰は堰でも、「桜の堰」ですって。これぞ写真俳句の強み。写真俳句ならではのユーモア表現を、見事にものにした作品です。
下萌の土手黙々と新学期
島根県) 吉田 良次 様

「下萌(したもえ)」とは春の季語です。名もない草の芽が、冬の枯れ果てた大地から力強く芽吹くことをいいます。誰に水をもらわなくても、どれほど皆に踏みつぶされても、春の到来とともに、草々はけなげに芽を出しました。さあ新学期。私たちもこの下萌に負けないように、黙々と頑張ってまいりましょう。
先生とお手手つないで花時間
東京都) 一郎 様

「花時間」という言葉、なにか雑誌のタイトルみたいです。どういう意味かはすぐに分かります。普段なら、教室で教科書を広げ、算数や国語の勉強をするはずの時間でしょう。でも今日は違います。満開の桜の下、野道のレンゲ、イヌフグリ、スミレ、タンポポなどを見に行く、「花時間」ですから。
「1+1が2人に」とはつまり、プロポーズをしている瞬間ということでしょう。何気ないはずのひと時が、「その日」だったのです。もちろん実際は、二人はただ単に、コーヒーを飲んでいるだけかもしれません。でもこの場合、事実はどうでもいいのです。こんな表現が写真俳句には許されます。ちなみに作者は「角砂糖ゆるり溶ければ涙止む」という写真俳句も作られました。この時は失恋しちゃったのかな? 背中越しの二人に、どうか幸せのおこぼれを受け取ってくださいね。