フェイスブックは2004年に開始されたSNSで、ツイッターよりも長い歴史を持ち、世界で7億5千万人が利用するという、海外では最大のSNSです。しかし日本で注目されだしたのは2010年の後半からで、ツイッターよりも遅いタイミングでした。それまで日本であまりブレイクしなかった理由としては、すでに「mixi」や「モバゲータウン」といったSNSが普及していたことが挙げられます。外国人と友達になってコミュニケーションをしたい人以外には、積極的にフェイスブックを利用する理由があまりありませんでした。
ところが、2010年に入り日本法人が設立されたこと、2008年から進めてきた日本語化が完成してきたこと、インターネット業界で注目を集める「グーグル」を超える新しいビジネスとなる可能性が強く語られるようになったことなど、さまざまな要因から注目度が急上昇しました。
また、2011年1月に「ソーシャル・ネットワーク」という映画が公開になりました。これはフェイスブックの創業者であるマーク・ザッカーバーグ氏をモデルにした作品で(フェイスブック創業のストーリーそのままの内容というわけではありません)、ちょうどフェイスブックの注目度の高まりとも重なり、大話題作となりました。「ソーシャル・ネットワーク」はたくさんの映画賞も受賞しています。日本においてフェイスブックは、新しいビジネスとしての可能性が特に注目を集めているのです。
インターネットの多くのサイトでは、「ハンドルネーム」というネット用の仮名を使ってコミュニケーションをするのが常識です。先も挙げた日本のSNS、mixiやモバゲータウンも同様で、少数の実名のユーザーもいますが、多くのユーザーはハンドルネームを利用しています。所属企業や、年齢、性別、住んでいる場所なども、隠しておくことが可能です。ツイッターも、ハンドルネームを利用している人が多くなっています。
一方でフェイスブックでは、実名の登録が必須です。所属企業やこれまでの経歴なども登録する欄があり、身元をしっかりと明かした上でコミュニケーションをするのがフェイスブックの常識となっています。インターネットで実名を必須にする必要はないのではないか、という意見もあるものの、実名だからこそ信頼性が高く、ビジネスにも結びつきやすい、という期待もされています。
フェイスブックは実名が必須。他のSNSとは違う点として打ち出すことで、日本でも差別化に成功しています。
TwitterFacebook
ツイッターやフェイスブックの特長に、「人とのつながりを通じて情報が流れる」ということがあります。テレビや新聞の情報は、電波や販売店を通じて届きます。それは、いわば誰もが同じ情報を手に入れられるシステムです。それに対して、ツイッターではフォローする、フォローされるというつながりを通じて、情報が流れます。
フェイスブックもツイッターと似ていて、誰かと「友達」になると、友達の情報が自分のページで見られるようになります。つまり、人によって得られる情報が異なり、誰もが同じ情報を手に入れられるわけではありません。仲のいい人、信頼する人、という人間関係のネットワークを通じて情報が流れ、そして、それがときには人の考え方や行動に影響を与えます。また、つながりの中で仕事の受発注が行われたり、転職が成立したり、といったこともあります。
インターネット上、特にSNS上で可視化された人と人とのつながりを「ソーシャルグラフ」と呼ぶことがあります。これからはソーシャルグラフ上を流れる情報に大きな価値がある、だからツイッターやフェイスブックに積極的に参加して人間関係を作ろう、という考えが、インターネットを活用している人たちの間で広がっています。
ツイッターやフェイスブックは、参加して人と積極的つながっていくことが、大きな価値を生むと考えられます。
TwitterFacebook
ツイッターやフェイスブックは、情報を一方的に収拾するためだけのサイトではありません。自分も情報を発信して、他の人に興味を持ってもらうことで、人と人との双方向のつながり、つまりソーシャルグラフが成立します。
とはいえ、何を発信すればいいの?と戸惑う人も多いはずです。仕事に関しては、会社の規定に抵触するようなことは発信できません。また、個人情報の流出につながること(例えば家の詳しい住所が推定できるようなことを書くことや、友達の写真を承諾なく載せてしまうことなど)も、避けるべきです。
「何を書くか」には、実のところ多少の慣れとセンスが必要になります。興味のある発言をする人をみつけて、その人の話題に乗って感想や自分が補足できる情報を書いてみると、元の発言をした人に喜んでもらえるかもしれません。問題があまり起こらない無難なこと、例えば、どんな本を読んだ、どこの店で食事をした、どんなテレビ番組を見た、というようなことを書いてみてもいいでしょう。また、顔見知りの友達に自分のアカウントを知らせて、ツイッターやフェイスブック上でつながり、お互いの友達を紹介し合うのも楽しいものです。
ご近所のコミュニティや異業種交流会のようなものに代わり、ツイッターやフェイスブックを通じて人と知り合おうというイベントもたくさん企画されています。
ツイッターやフェイスブックが注目される背景には、ソーシャルグラフへの高い関心があります。これは個人間の関係だけにとどまらず、企業やメディア、自治体なども、お客さん/読者/利用者と親しい関係を作ることに、新しいビジネスの可能性があると考えているのです。
ツイッターでは、お店のアカウントが紹介したキーワードをお店で伝えると割引、という「ツイッター割引」とでも呼ぶべきサービスを行っているお店があります。ツイッターで予約が取れる飲食店や、お客さんが来店したタイミングを覚えていて、ヘアースタイルを整えるべきタイミングを教えてくれる美容院など、きめの細かいサービスを行っているお店もあります。
またフェイスブックには、携帯電話やスマートフォンを持ってお店に行き、その場所で「チェックイン」という操作をしたら割引クーポンを入手できる「フェイスブック チェックインクーポン」という機能があります。こうしたものも、ソーシャルグラフを通じて特別な情報が伝わることの一例です。
人間関係が大切、という考えは昔からあるものですが、人間関係を作るためにインターネットを活用する(ソーシャルグラフを作る)という考え方は、ごく新しいものです。もしも興味がわいたら、ツイッターやフェイスブックを実際に試してみてください。
ツイッターもフェイスブックも、実際に始めることはとても簡単で、お金もかかりません。それぞれの公式ガイドを読むと、詳しい使い方が解説されています。
ツイッターとフェイスブックのどちらから始めようかな、と迷う方には、機能がシンプルで手軽に利用できるツイッターをおすすめします。もしも、仕事の関係者に利用者がたくさんいるようなら、フェイスブックからでもいいでしょう。