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無線LANの基礎を知っておこう

最初に、無線LANで何ができて何が便利なのか、無線LANの基礎を解説します。まずは概要を押さえておくだけで充分です。

無線LANって何?

無線LANとは、その名のとおり、ケーブルなしでデータをやりとりするネットワークのことです。LANはLocal Aria Network(ローカル エリア ネットワーク)の略で、会社や家など、あるていどの規模内で利用できるコンピューターのネットワークを指します。

無線LANを利用するとLANケーブルが不要になるので、パソコンやプリンターの置き場所に迷わない、LANケーブルに足を引っかけるなどのトラブルがない、パソコンの周りが煩雑にならない、などといった多くのメリットがあります。

また、必要になる機器も、無線LANの親機と子機だけです。最近のパソコン、特にノートパソコンの場合は無線LAN機能が標準で搭載されているので、そうした機器で利用するならば無線LAN親機(以降、親機と記述)のみの購入で済みます。

無線LAN機能が搭載されていないパソコンでも、子機を利用すればすぐに接続できます。子機には、USBタイプやカードタイプなどいくつか種類がありますが、一番手軽で汎用性が高いのはUSBタイプでしょう。USBタイプであれば、パソコンのUSB端子に挿すだけという手軽さで利用が可能です。

無線LANはわかりにくい?

こうしたメリットが多い無線LANですが、専門用語がたくさん出てくるのも事実で、これが無線LANをむずかしくしている理由の1つかもしれません。無線LANを理解するうえで最低限、押さえておきたいことは、次の3点です。

  1. 無線の規格が複数ある
  2. 暗号化の規格が複数ある
  3. 自動設定の規格が複数ある

この3点について、簡単に解説しておきましょう。

無線LANの規格は4つ

無線LANの規格は、Wi-Fi Alliance(ワイファイ アライアンス)という世界的な業界団体が定めており、現在、次の4つがあります。どの規格を採用するかによって、通信の速度や使用する周波数帯が異なります。

  1. IEEE802.11a
  2. IEEE802.11b
  3. IEEE802.11g
  4. IEEE802.11n

また、この4つは、使用できる周波数帯が2.4GHz帯と5GHz帯の2種類に分かれます。IEEE802.11.nだけは両方の周波数に対応していますが、親機と子機の周波数帯が異なると使えないので注意が必要です。

それぞれの規格の内容は表にまとめますが、ここでは、現時点での主流の規格がIEEE802.11.nであること、IEEE802.11.nの機器は他の規格にも対応しているものが多いこと、IEEE802.11.nは両周波数帯に対応していること、を理解しておけはいいでしょう。

無線LANの規格と周波数帯について

2.4GHz帯:IEEE802.11n、IEEE802.11b、IEEE802.11g。5GHz帯:IEEE802.11n、IEEE802.11a。互いに通信はできない

IEEE802.11nはどちらの周波数帯でも使えるが、2.4GHz帯と5GHz帯をまたいでの通信はできない

無線LANの規格と特徴
規格 特徴
IEEE802.11a 周波数帯:5GHz速度(理論値):54Mbps速度は速いが障害物に弱い
(機種によっては、電波法により屋外での使用ができない場合があります)
IEEE802.11b 周波数帯:2.4GHz速度(理論値):11Mbps伝達距離は長いが速度が遅い
IEEE802.11g 周波数帯:2.4GHz速度(理論値):54Mbps伝送距離は長く速度も速い
IEEE802.11n 周波数帯:2.4/5GHz速度(理論値):600Mbps遠距離でも安定した伝送速度で通信可能

2.4GHz帯より5GHz帯のほうが速い?

単純に通信速度の理論値だけで言えば、IEEE802.11.nでは、2.4GHz帯と5GHz帯のどちらも最大600Mbpsと高速です(現時点で最大300Mbpsの製品がほとんどです)。ただし、2.4GHz帯の場合、Bluetoothや電子レンジなど対応している機器の種類が多いので、干渉が起きると速度が低下するという問題はあります。5GHz帯のほうは対応機器がまだ少ないので、干渉が起きにくいという利点があります。

暗号化の種類は3つ

無線LANの規格だけでも複数あるのに、暗号化の種類も複数あるというのが混乱の原因かもしれませんが、これも知ってしまえばさほどむずかしくはありません。無線LANは、先にも解説したように、無線通信でデータをやりとりするので、電波を傍受されると内容を読まれてしまう危険性があります。そのため、データのやりとりでの暗号化が必須で、そのための規格が用意されているのです。現時点では、主に次の3つが利用されています。

  1. WEP
  2. TKIP(WPA)
  3. AES(WPA2)

暗号化の各内容については以下の表にまとめますが、ここでは、最もセキュリティーが強固な「AES」の利用をお勧めします。

暗号化の種類と内容
方式 特徴
WEP R4Cアルゴリズムの共通鍵暗号を採用。セキュリティー強度が弱い
TKIP(WPA) WEPの脆弱性を補完するために策定。パケットごとに暗号鍵を自動生成する
AES(WPA2) 128/192/256bitという長い暗号鍵が使用でき、最もセキュリティー強度が強い

AESだけでないのはなぜ?

無線LANの暗号化で一番強固なものがAESであれば、AESに統一すればいいじゃないか…と思われるかもしれませんが、そうはいかない事情があります。パソコンやプリンター、ゲーム機など、すべての機器がAESに対応していれば問題ありませんが、少し古いネットワーク機器では、WEPやTKIPにしか対応していないものも存在します。無線LANの規格と同様、いまも市場に出ており、実際に運用されている古い規格の機器でも同じネットワークに接続できるようにするには、古い規格も必要になるわけです。

自動設定の規格は3つ

無線LANの規格と暗号化の規格が無線LANを理解するうえでの基本ですが、最後に「自動設定」の規格についても少し触れておきます。

ここまで説明してきたように、無線LANはさまざな規格があるためにわかりにくく、初心者には手を出しにくいものでした。そこで各メーカーが誰でも簡単に無線LANを導入できるように考案したのが「自動設定」です。画面の操作に従って専用ボタンを押したり、PINコードと呼ばれる数字を入力するだけで接続ができるようにした機能です。バッファローが開発した「AOSS」とNECアクセステクニカが開発した「らくらく無線スタート」があります。

このように、自動設定で接続できれば簡単ですが、メーカーごとに方式が異なるため、メーカーの異なる親機と子機では使えないなど問題もありました。そこで無線LANの業界団体であるWi-Fiアライアンスが共通の自動接続の規格を策定しました。これが「WPS」と呼ばれるものです。WPSは、どのメーカーの機器でも対応しています。
まとめると、自動設定の規格は次の3種類になります。

  1. AOSS(バッファローが開発)
  2. らくらく無線スタート(NECアクセステクニカが開発)
  3. WPS(Wi-Fiアライアンスが策定)

SSIDと暗号化キー

最後は、実際の暗号化で利用されるSSIDと暗号化キーについて解説します。
SSIDとは、親機に振られている識別番号です。あるパソコンが親機のネットワークに接続する場合、接続一覧から目的の親機のSSIDを選択します。すると、暗号化キーの入力を求められるので、暗号化キーを入力して一致すると無線LANに接続できるのです。

無線LANは携帯電話やノートパソコン、スマートフォンなどの移動しながら使う機器で利用されるので、機器の周辺環境によっては接続先一覧に、他人の無線LANのSSIDが表示されることがあります。こうした別の無線LANに簡単に接続できないように、SSIDと暗号化キーで識別しているのです。暗号化キーは製品によっては「セキュリティーキー」などとも呼ばれます。SSIDと暗号化キーは、製品本体や付属のシールなどに記載されており、あとから変更も可能です。

親機のSSIDと暗号化キー

無線LANの規格を確認しよう

ここまで解説したように、無線LANには4つの規格があるので、つなぎたいと思っている機器がどの規格に対応しているのかをあらかじめ確認しておきましょう。複数の機器がある場合は、すべての機器が無線LAN接続できる規格を選択する必要があります。無線LANの規格は、製品のマニュアルやホームページなどに記載されています。

ホームページに記載されている無線LANの規格の例(キヤノン、PIXUS MG6230の場合)